鎌田紀彦の「家づくり常識のウソ」PART4
PART4のテーマは、太陽エネルギーの利用です。
省エネやエコロジーへの関心が高まる中、住宅においても
太陽光発電システムなどがもてはやされていますが、果たして…。
太陽エネルギーのより有効な利用を、現実的な視点で鎌田先生が説きます。

太陽エネルギーを上手に利用する家をつくろう

太陽電池住宅は本当に普及するか

 太陽電池を屋根に張りつめた住宅が広告やTV番組で取り上げられ、おなじみになってきたような気がします。しかし実際には、そうした住宅を住宅地で見かけることは、ほとんどありません。かかる費用は大体300万円。国の補助金が100万円で、個人の負担は200万円という内訳ですが、5年前は600万円(個人負担300万円)でしたから、随分値下がりしました。これが、国のねらっていたことで量産効果です。税金を使っての成果ですが、皮肉にも、補助金なしで設置されることはないようです。純粋に、地球環境のために個人でできることをしようとして設置される人も中にはおられるかも知れませんが、補助金と、年間10万近くの電気代が少し安くなるという打算が働いているようにも思えます。
 将来的にもっと安くなれば普通に使えるようになるでしょうが、現在は全く採算のとれるものではなく、お金に余裕のある人たちの特別な方法でしかありません。私は、国が電力政策としてもっと太陽電池に正面から取り組み、ビルや公共施設の屋上にもっと効率的に設置して、さらに量産効果を上げていく方が良いと思います。住宅レベルには、太陽熱温水器等のもっと安い太陽エネルギー利用設備に補助金を使うべきなのです。

市販されている太陽熱利用住宅の省エネ効果に「?」

 北海道ではあまり多くはありませんが、太陽熱利用をうたった住宅システムにはいろいろなものがあります。最も代表的なものはOMソーラー住宅でしょう。これは、元芸大教授の奥村先生が開発したシステムですが、その弟子たちの設計家が設計したモデル住宅がとてもきれいな空間デザインをしていて、素晴らしい夢のような住宅であることから、雑誌等で目にしたことがある人も多いと思います。
 しかし、このシステムは住宅の高断熱化をしていないため、日中は確かに太陽熱を床下に引き込み、快適な環境をつくってくれるのですが、夜になると同じ快適性を得るために灯油やガスで暖房しなくてはなりません。高断熱でないために、この燃料費が大きく、とても省エネ住宅とは呼べません。数年前から私の開発したパネル工法システムを使いはじめ、高断熱化したのですが、高断熱住宅は窓から入ってくる日射だけで日中は十分暖かくなるのに、さらに屋根のコレクターから暖かい空気を床下に押し込み、室内に出すため、オーバーヒートしてしまうようです。200万円もかける太陽熱コレクターのシステムが、あまり役に立たなくなってしまいます。それじゃ、そのエネルギーでお湯をつくろうということになるのですが、お湯をつくるだけだったらもっと安い設備で済むのです。
 この他にも、エアサイクル住宅とか、ソーラーサーキット等、多くのシステムがありますが、北海道で普及している高断熱住宅と比べて、大差のない省エネ効果しか持たないか、はるかに低い性能しか持っていません。高断熱住宅も窓から入ってくる日射や屋根・壁にふりそそぐ太陽熱を十分に利用しているのです。

●標準的な次世代基準対応住宅(45坪)の暖房灯油消費量(リットル)の計算結果
標準的な次世代基準対応住宅(45坪)の暖房灯油消費量(リットル)の計算結果
上から
●標準
●窓の日射を効率的に取り入れるようにし、断熱戸をつけた場合
●さらに、断熱材を厚くした場合
●さらに、熱交換換気をつけた場合
熱交換換気設備は、現状の商品では消費電力のことなど問題が多いので、これから開発する必要があると考える。

サンルーム型のソーラー住宅

 ソーラーハウスというと、まっ先にイメージするのがこのタイプでしょう。私たちも、実験住宅として10年以上前にはいろいろ研究しました。サンルームは、日射があるととても暖かいのです。室内へ通じる開口部をあけて、家の中に太陽熱を取り込むのですが、夜になるとそれを閉めるので、サンルームの中は今度は寒くなります。
 サンルームの床の熱容量(土やレンガ、コンクリート)をうまく利用すれば、0度以下にならないようにはできます。夏はきわめて暑くなるので、日除けや窓の開放で対処しなければなりません。こうしたことをすると結構なお金がかかってしまいます。せっかくのサンルームだから、生活空間として広くつくりたいし、観葉植物も置きたい。冬の間もその植物を枯れないようにするには、やはり暖房しなければならないようで、とすると省エネになっているとは限らないと言えます。
 しかし、広いサンルームは生活空間としてとても魅力的で、冬でも使える半戸外空間として新しい生活をもたらしてくれます。写真は、最近つくった秋田の家です。この家の主はアプローチを兼ねた30畳近い空間で、日本海側の秋田の冬を気持ち良く過ごされているようです。

伊達の家。の写真

秋田の家。の写真

窓廻りの構成を最適化するだけで、省エネ性が高くなる

 高断熱住宅では、太陽が出ていれば窓から入る日射しだけで十分暖かく、暖房はいらなくなります。そればかりか、25〜30度にもなってしまうことすらあります。従って、サーモスタットで自動的に停止しても自然放熱を続けるような電気蓄熱暖房器を室内に置くと、日中、室温がオーバーヒートしてしまって、冬暑い家になったりします。こうしたオーバーヒートを防ぐには、室内の熱容量を大きくすれば熱が吸収され、室温があまり上がらなくて済みます。そればかりか、夜になってもその余熱でそんなに温度が下がらなかったり、暖房が少なくて済みます。木造住宅の場合、室内の熱容量を大きくするのは難しいのですが、最近の新しい技術で基礎断熱をした住宅は、床を通して床下のコンクリートや床下地盤に熱が吸収され、直接室内に面してはいないけれども、かなり大きな熱容量として効いてきます。従って、蓄熱暖房器も床下に設置すると、オーバーヒートがかなり防げるようです。
 こうした住宅では窓廻りの構成を工夫することによって、太陽熱を効率的に室内に取り込むようにすると、意外に大きな省エネ効果が得られます。
 それでは、どのようにすれば良いのか。次に5つのポイントをあげます。
(1)ガラス面積の比率の大きなサッシを使う(ガラス率の高いサッシ)
(2)日射取得率の高いガラスを使う
(3)断熱戸をつける
(4)熱損失の小さいガラス・サッシを使う
(5)窓面積を大きくする
 太陽熱を取り込むのですから、当然南向きの窓のことですが、(1)では、サッシのメーカーの違いでびっくりするほどの差があります。枠の細いサッシが良いわけです。サッシの開閉方式の違いでも差が出ます。完全外付型の引違いサッシや、大きなはめ殺し窓が最も良いようです。引違いサッシは隙間風が多いと思われていますが、最近のサッシは正しく直角に取り付けて竣工時に調整すれば十分な気密性を持っています。
 (2)も意外に盲点なのですが、Low-Eペアガラスもメーカーによって15%も差があります。断熱性能は変わらないのですから、できるだけ日射熱を通しやすいガラスを使った方が良いわけです。
 (3)は、断熱障子等を窓に入れるのですが、最近、ハニカムサーモスクリーンという、断熱障子よりも断熱性の高い、ロールブラインドのように開閉できる窓スクリーンが売り出されました(セイキ総業製)。これは、夏の日射遮閉効果が高く、冬の夜、このスクリーンを降ろすと窓からの冷たさがほとんどなくなり、室内の快適性も大きく向上します。
 (4)については、最近ペアガラスの中にアルゴンガスを封入して、性能がワンランク上がったガラスが使われるようになりました。日射の入らない北側や東西面の窓には、ガラス率が小さくても、木製サッシや北欧の超高性能ガラスのサッシを使うことで、住宅の熱損失を小さくできるし、窓の冷輻射や結露を防ぐことができます。
 (5)に関しては、日本の住宅は南側の窓が十分大きいので、これ以上あまり大きくはならないようですが、当然これで日射取得は増えます。  これらを組み合わせて住宅をつくると、窓の構成を変えるだけで、次世代基準対応の住宅が15〜20%程度省エネになります。次世代基準をクリアするぎりぎりの断熱ではなく、経済的に大きな負担にならない範囲で断熱厚をもう少し厚くすると、合わせて約30%の省エネが可能になります。これはもう、立派なソーラーハウスなのです。こんな簡単なことで、太陽電池をのせた住宅と同じように地球環境にやさしい家ができるのです。こうした家の設計マニュアルを、新住協で作成中です。皆さんも、家づくりにぜひ取り込んでいただきたいものです。

窓廻りの熱画像の写真

屋根の上に太陽熱温水器をのせる

 本州の方に行くと、屋根の上に太陽熱温水器をのせている家をよく目にします。水道の圧力で屋根の上まで水を持ち上げ、タンクに水をためて、ソーラーコレクターとの間を自然循環させてお湯をつくり、それを風呂等に落として使うという、電気等は全く使わない太陽熱利用機器です。北海道では、冬、凍結して使えないため普及していません。しかし、この設備はあまりお金がかからないため、極めて有効です。北海道でも使えるものが出来ないか検討中です。
 最近、日本のメーカーもようやく、温水コレクターを使った設備を再び市販し始めました。20年程前は随分設置された商品ですが、今度は、暖房にも使えるようにしてあります。現時点では、太陽電池よりもローコストで済み、省エネ効果も意外に大きいようです。こうした設備に補助金を出し、普及させ、コストダウンする方が地球温暖化を防ぐには有効なのです。太陽電池等は、風力発電と合わせてもっと大規模に取り組むべきことと考えます。

太陽熱暖房給湯システムの写真
サンポット(株)で開発中の太陽熱で暖房・給湯を行うシステム。不足分は灯油ボイラーで追焚きする。同社では、もっと簡便な給湯システムも販売中。
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