鎌田紀彦の「家づくり常識のウソ」PART3

住宅用木材をはじめ、様々な用途に使われながら、
輸入木材に押されて、林業それ自体も壊滅的となってしまった、から松。
PART3のテーマは、そのから松を使った家づくりと、
執筆者・鎌田紀彦先生を中心に、新住協(新木造住宅技術研究協議会)が開発してきた
地場産材によるローコストな住宅のシステム「PFP・(スリー)」です。

森林保護のために道産木材を使う

朽ち果てようとしている北海道のから松林

 森林王国・北海道のから松林が、朽ち果てようとしていることをご存知ですか。北海道には、自然林は知床などのごく一部を除き、ほとんどありません。明治の入植以来、北海道の森林は伐採され尽くし、今あるのは、その後植林された人工林なのです。そして、その多くがから松です。
 かつては、いろいろな用途のあったから松も、昭和40年代の木材自由化以来、安い輸入木材に押され、現在では、チップとして紙原料にするにしても高すぎるため、から松の林業は壊滅状態なのです。人工林は木が育つ過程において、間伐が必要です。木が大きくなるにつれて、間引いて、太い木を育てるのですが、道内のみならず、日本中のから松林ではこの間伐が長い間ほとんど行われていません。10年ほど前の日本列島を縦断した大きな台風によって、青森のりんご等が大きな被害を受けましたが、森林も、この、間伐が行われていないために細く成長し根張りも弱い人工林が、極めて大きな被害を受け、北海道でも何千ヘクタールに及ぶ被害を受けたのです。

超高温乾燥技術でから松の利用が可能に

 北海道では、から松の利用拡大を行おうとやっきになってきました。ところが、から松の間伐材(直径15〜25センチ程度)の木材は、乾燥による変形が極めて大きいのです。長さ9〜10尺の柱材に製材して放置すると、全体で360度もねじれてしまいます。これでは住宅には使えません。
 しかし近年、超高温乾燥という画期的な木材の人工乾燥技術が開発され、これで乾燥した製材は、狂いも少なく、松やにの発生も抑えられ、また価格も、えぞ・とど材に比べて安く供給できることがわかってきました。これらの木材を積極的に利用することで、から松人工林の間伐が進められれば、再び北海道の豊かな森林が育ち始めるのです。
 から松を使った家づくりが、北海道の森林を守り、地球環境問題に貢献できる。これは一石二鳥のエコハウスなのです。

道産から松を使ったPFPシステムの住宅事例
道産から松を使ったPFPシステムの住宅事例写真1
道産から松を使ったPFPシステムの住宅事例写真2
道産から松を使ったPFPシステムの住宅事例写真3

道産から松を使った住宅づくり

 から松は、住宅用木材として北海道では古くから使われてきました。これらは、天然から松や、手入れの行き届いた人工林で40〜50年育てられた太い木材です。から松は、不思議なことに、太い成熟した木材は狂いも少ない良材なのです。
 戦後の植林が現在では大きく成長し、その丸太からは太い梁が製材できます。しかしこの製材も、えぞ・とどが主流の北海道の住宅では全く使われていません。ツーバイフォー住宅はほとんど100%北米産木材ですし、シベリア産材、北欧産材も多く輸入されています。から松は、これらより強度も高く腐りにくいという特長をもっています。赤味が多く色が派手という点は趣味の分かれるところですが、インテリア、エクステリアとして白い壁には、えぞ・とど等の白い木材よりずっと良く調和します。私達はこうしたから松を、家の内・外で、柱・梁として表しにする住宅のシステムを作ってきました。

地場産業としての住宅産業を守るPFP・(スリー)システム

 バブル以来、住宅のパネル化が進められ、住宅生産の合理化が関心を集めました。住宅を作る側では、大工不足に対処するため取り組まなくてはならない課題だったのですが、ユーザーにとっては、住宅価格が上がってしまう仕組みでしかありませんでした。全てのパネルシステムはコストアップをもたらしたのです。大工の手間が少なくなることによるコストダウンよりも、パネル化によるコストアップの方が大きかったのです。  私達は早くからこの欠点を見抜き、実質的なコストダウンをもたらす住宅のシステムづくりを行ってきました。大量販売を目指さず、地場の木材業者の手による加工、そして地場の工務店による家づくりによって、地場産業としての住宅産業を守ることを目標とし、ユーザーにとってはコストダウンと共に、熱性能や構造、安全性能、耐久性能向上をもたらす住宅システムであり、本来の在来木造のデザインである柱・梁の見えるウッディな家づくりを目指したのです。いろいろな試行錯誤がありましたが、ようやく目途が立ってきたのは昨年くらいからでしょうか。この住宅システムの開発の過程で、10棟余りの試行建設を行ってきました。そのいくつかの作品が今回掲載した写真の住宅です。私達の家づくりの方向性がご理解いただけると思います(Part1「柱の見える家をつくろう」もご参照ください)。このシステムは、来年春(2001年)から北海道内に供給可能になります。

家具から外構部材まで。住環境コンポーネントとしてのPFP・

 住まいづくりを考える時、どうしても家の間取りやデザインの話が中心になります。そして次には、収納が多い、台所が使いやすいなど住まい勝手の話になったり…。こうして一生懸命考えた家が出来ても、予算を使い果たして、ホルマリンだらけの安い張りもの家具を買ったり、外には不釣り合いなスティール物置や車庫、カーポートというように、最終的にはちぐはぐで、妙に家だけが立派で、外廻りのさびしい、家の中のみすぼらしい住宅が出来てしまうのです。この原因の第一は、安くて良い外構部材や収納家具システムがないことです。  また私達は、柱の見えるウッディな家づくりを始めて以来、大手建材メーカーの巾木、廻り縁、階段等の造作材や室内ドア、収納扉等が、こうした家に全くマッチしないことに気づきました。印刷された木目模様がきれい過ぎるのです。無垢の節のある木材を使いたいのですが、そんなものはカタログにありません。外部の門、塀、カーポート等もデザインとしてマッチするものは少なく、あっても極めて高価です。私達はPFP・(スリー)のシステムの部材を使いながら、これらの開発を進めています。高価なシステム家具、ウッディなカーポートや塀のシステム、無垢の木材による造作部材…。こうしたものを住宅のシステム部材とワンセットにし、構造部材の一部として供給システムを組み立てると、驚くほど安くできるのです。このように、住宅の基本部分をスタンダードなシステムとして構成しようとした時、衣料品の「ユニクロ」と極めて多くの共通点があることに気がつきます。「ユニクロ」のように、中国で大量生産とは行きませんが、質の良いスタンダードな製品を、流通をカットしてユーザーに届ける、住宅のユニクロ化とでも呼びたいような気がしています。

PFPシステムについては下記へお問い合わせください。
新木造住宅技術研究協議会
本部事務局
電話:011(861)5317

PFPシステムによる室蘭の実験住宅
柱・梁を表しとした建物そのものはもちろん、収納家具から建具、カーポートなど、
内部造作、外構にもPFPシステムを導入。木質感あふれる住まいをトータルにデザインした。

室蘭の実験住宅1の写真
  室蘭の実験住宅2の写真

室蘭の実験住宅3の写真
  室蘭の実験住宅4の写真

室蘭の実験住宅5の写真
  室蘭の実験住宅6の写真
  室蘭の実験住宅7の写真
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