鎌田紀彦の「家づくり常識のウソ」PART2
Part2では、北海道ではタブーとされている雪止めや雨樋のこと、
そして断熱材への認識について、思い込みを打ち破ってくれる見解をご紹介します。

危険がいっぱいの無落雪屋根

 最近の北海道の住宅は、急勾配の三角屋根住宅に人気が集まっているものの、敷地の狭さから、都市部では、無落雪屋根の住宅が圧倒的に多いようです。高齢化時代を迎えて、雪のことを心配しなくて済む無落雪屋根は、これからも増えていくでしょう。しかし、これらの住宅が、常に雨もりの危険にさらされていることをご存じですか。ハウスメーカー、工務店に聞くと、これまで建てた無落雪屋根住宅の漏水事故は、感覚的に、5%くらいはあるだろうとのことです。これは事故率としては極めて高いのですが、雪を落とさないためには、やむを得ないこととして、ユーザーも含めて、あきらめているのが現状のようです。

雪止めはタブー?

 無落雪屋根に漏水事故が多いのは、建築の常識です。なぜならば、樋を建物の中央部に置いて雨を集めているのですから、樋の凍結や、落葉や土ぼこりによるドレインの目詰まり、樋の腐蝕など、何かが起これば、雨は漏ります。普通の屋根で、外に水を流し、雪止めをつければ良いはずなのですが、北海道では、そのような屋根はすがもりを起こすため、タブーとされてきました。本州では、外気温が高く、軒先部に北海道のような厚い氷はできないので雪止めをつけられる、と理解されています。しかし、北ヨーロッパや北米でも、普通に雪止めが使われています。北海道並みに寒いところ、雪の多いところでも、雪止めで、大きな問題は起こってはいないようです。どうしてなのでしょうか。

天井裏へ逃げる暖かい空気が問題

 すがもりの原因は、室内の熱が天井裏に逃げ、その熱で屋根上の雪が融け、その水が流れていく軒先部は外気が冷たいため凍結すると説明されます。小屋裏結露も同じ原因です。無落雪屋根は、この熱を利用して、樋を建物中央に設け、樋の凍結を防ぐという考え方です(詳しくは図を参照してください)。
 天井裏に逃げる熱が原因なのですから、その熱を、天井面の断熱・気密をきちんとして、防ぐのではなく逆手にとって内樋とするのは絶妙なアイデアではありますが、根本的な解決にはなりません。小屋裏換気によって結露を防ぎつつ、室内から小屋裏に逃げる熱で、樋の凍結を防ぐという微妙なバランスの上に成立している無落雪屋根は、異常な気象条件のもとではバランスが崩れて樋の凍結を引き起こします。
小屋裏の図解

高断熱・高気密が解決する

 高断熱・高気密住宅では、天井裏に熱を逃がさないために、その主たる原因である壁上部に気流止めを設け、天井面の断熱・気密を確実に行います。また、厚い断熱材によって、天井面全面から逃げる熱も極めて少なくなります。これは、住宅を快適に省エネにするためであったのですが、天井裏、屋根面の温度は大きく変わりました。欧米の住宅は、もともと天井面の断熱・気密がしっかり行われていたから、屋根に雪止めをつけても問題は発生しなかったのです。ならば、北海道の高断熱住宅も、雪止めをつけて問題はないはずです。

雪止め先進地、本州の雪止めを使う

 雪止めを設置すると屋根が傷むと言います。確かに厚い氷堤ができ、雪が大量に積もるとその重さで、雪止めもろとも大落雪という事故は多く発生しています。高断熱住宅では厚い氷はできないはずですから、雪の重さに十分耐える丈夫な雪止めを使えば良いはずです。雪が多いことでは北海道をはるかに上まわる新潟等、本州の日本海側の地域では、雪止めとして、鋼製L型のバー材(アングル)がよく使われています。それを固定する部材は、ステンレス製のしっかりした部材です。屋根を葺いた後、屋根の金属材に止めつけるものではなく、屋根を葺きながら下地の木材にしっかり止めつけるものもあります。屋根の雪の量を計算し、それに耐える構造にしっかり雪止めをつければ、落雪によって屋根面に細かいひっかき傷がつくこともなくなり、屋根鉄板の耐久性が向上します。
須藤建設の登別のモデルハウスに採用された、アングルを使って屋根幅いっぱいに通す雪止め。北海道ではまだ珍しいタイプだが、屋根のデザイン面からも今後が期待される。
●写真提供/須藤建設(株)
屋根の写真

軒先には、丈夫な雨樋

 雪止めをつけ、屋根に雪をのせたままにすると、太陽熱で融けた水によって、軒先につららができたり、若干の氷堤ができます。しかし、これはすがもりを起こすほどではありません。つららを防ぐには、丈夫な雨樋をつければ良いのです。カナダ製の雨樋が市販されています〈販売元:宇部気密ハウジング(株)〉。これは、北海道ですでに10年近くの実績があり、その丈夫さは折紙つきです。また、本州の多雪地域では、図のような樋を止めるブラケットが使われており、国産の雨樋をこのブラケットで止める方法も良いようです。
 雨樋を軒先につけると、冬期間の軒先からの雨だれがなくなり、その水はねで生じていた窓ガラスの汚れや外壁の凍害も少なくなり、建物の耐久性が高められます。北海道の家には雨樋はつけられないという常識もまた、くつがえされることになります。
平葺用羽根付の雪止め金具(アングル)
平葺用羽根付の雪止め金具(アングル)。 ニイガタ製販(株)

金属板を面打した強度の高い樋受金具。
金属板を面打した強度の高い樋受金具。
ニイガタ製販(株)

フラットルーフによる無落雪屋根を

 北海道で一時普及したフラットルーフ工法は、軒先から雪がせり出したり、つららができるということで施工されなくなりました。しかし、高断熱住宅と丈夫な雪止め、丈夫な雨樋の組み合わせで、北海道でいま施工されているM型無落雪屋根よりはるかに安全で、長持ちする屋根が出来あがると考えています。最近増えてきたストッパールーフ等の勾配型無落雪屋根は、アイデアとしては面白いのですが、水を一ヵ所に集めることによる大きな欠点を持っています。これも同じ方法で普通の勾配屋根が無落雪になります。
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 こうした無落雪屋根は、理屈では分かっても、長い間しみ込んだ常識の壁は厚いようです。特に水漏れによる事故は影響も大きく、補修・改善に多額の費用がかかります。新住協では、会員工務店や顧問の研究者の協力を得ながら、研究開発に取り組んでいますが、寒地住宅都市研究所、指導センターなども含め、広く研究・開発・実用化を進める必要があると考えています。
雪止めと樋の写真
雪止めと樋が用いられた北欧の住宅の写真
雪止めと樋が用いられた北欧の住宅。

断熱材は何を使うべきか

大気中の代替フロン濃度が増加

 この夏、根室上空での環境庁の定点観測で、測定開始以来、初めて特定フロン濃度が下がったことが新聞紙上で報じられました。しかし同時に、代替フロン濃度は上昇し出したと言います。オゾン層破壊の元凶として製造・使用が禁止された特定フロンに代わって、使われ始めた代替フロンについても、オゾン層への影響は否定されていません。そればかりか、代替フロンは二酸化炭素に比べて2000倍近い地球温暖効果があり、メタンガスと共に京都会議でもとり上げられ、規制が始まっています。この代替フロン濃度が増加し出したということは、予想されていたにしても、深刻に受け止めなければなりません。

フロンを大量に使う建築用断熱材

 代替フロンの全消費量の中で、ウレタン発泡系や押出発泡ポリスチレン等の建築用断熱材が、かなりの割合を占めていることを知っていますか。これらの断熱材は、フロンガスを用いて発泡されます。その体積の95%以上がフロンガスなのです。
 このフロンガスは、徐々に大気中に放散され、解体・廃棄時には全量放散してしまうことになります。将来的には、その回収は大きな問題となるでしょう。
 そしてこのフロンガスも規制が始まっていて、数年から7〜8年後には使えなくなるのです。

フロン断熱材を使う矛盾

 高断熱・高気密住宅は、省エネルギーで快適な住空間を目的として開発されました。当初は、オイルショック以後の省石油が中心でしたが、現在は、地球温暖化防止のためにCO2排出をできるだけ少なくしようとすることが目的なのです。しかし、こうした住宅に、フロンを使った断熱材を用いることは矛盾でしかありません。太陽電池を屋根上にのせたり、リサイクルに大きな関心が集まる中で、50m近いフロンガスで被われた住宅に住む。何かおかしいとは思いませんか。

ノンフロンの断熱材を使おう

 フロンガスを使わない断熱材はたくさんあります。グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー等の繊維系断熱材はもちろんのこと、発泡プラスチック系でもビーズ発泡ポリスチレン板がそうです。梱包資材として使われている白い発泡プラスチック材の、もっとしっかりしたものです(例えば、岩倉化学YBボード)。また最近は、ウレタン系発泡断熱材にもノンフロンのものが使われ始めています。

 繊維系断熱材はいろいろな欠点を持っています。水蒸気を通しやすい、形が安定しない等ですが、例えばグラスウールでは、昔に比べ、密度も高くなり、細繊維化することで腰の強い性能の高い製品が標準的に使用されています。そして工法的には、通気層工法の採用や気密シートの材質・施工法を改善することで、その欠点はほとんど解消。そうした新しい技術で建てられた住宅の躯体は、100年持つと思っています。けれどもこのグラスウールも、施工時に細かいグラスウールを吸い込むと、極めてわずかですが、発ガン性の問題があると指摘されています。ガラスの成分の多くは体内で溶けてしまうのですが、原因は製造時の添加物。これへの対策を講じたグラスウールの製品もヨーロッパでは売られており、日本のメーカーも研究を始めたようです。
ヤシ繊維を用いた断熱材の写真
ヤシ繊維を用いた断熱材。
ドイツ・エコメッセにて。

自然素材の断熱材は使えるか

 前述したグラスウールの問題に対して、ドイツなどでは、セルロースファイバー(古新聞紙を原料としている)、ヤシ殻繊維、いろいろな草や木の繊維、コルク、羊毛、綿等の断熱材がエコロジストの間で使われ始めています。
 しかしセルロースでは、防虫・防火のために添加されるホウ酸や、印刷インキに含まれる重金属の問題が指摘され、天然材料には資源的な制約があります。亜麻の繊維は、住宅1軒分の断熱材を作るのに30ヘクタールの畑が必要です。コルクは貴重な資源です。羊毛は、1軒分に羊が何頭必要になるのでしょうか。どうも理想的な断熱材はいまのところないようです。グラスウールやセルロースファイバーは、ガラスや紙のリサイクルという観点から将来とも必要とされていくのではないでしょうか。メーカーの技術開発によって、より改良され健康な建材となることを望むと同時に、それを進めるのは、ユーザーのみなさんの意識と行動にかかっていると思います。

断熱材の種類と相当厚さのグラフ
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